天然のすっぽんは絶滅危惧種に指定されている

すっぽんは高級食材として知られ、漢方やサプリメントの材料としても用いられます。
現在そのほとんどは人の手によって育てられた養殖物のため、安定的に供給されています。

一方、天然のすっぽんは世界で絶滅が危惧されている生きものです。
すっぽんが瀕している危機について、具体的にご説明します。

すっぽんがレッドリストに掲載……レッドリストとは?

レッドリストと呼ばれるものは、2つあります。

IUCNのレッドリスト

レッドリストとは、絶滅が危ぶまれる世界の野生生物をランク付けしたリストです。
スイスに本部を置く国際自然保護連合(IUCN)が作成し、哺乳類、鳥類、爬虫類・両生類など分類ごとに発表され、状況に応じて改訂されます。

2016年7月、IUCNはすっぽんを新たに絶滅危惧種に加え、レッドリストを改訂しました。

日本の環境省のレッドリスト

日本の環境省や水産庁が発表する国内の絶滅危惧種を掲載したリストも、同じく「レッドリスト」と呼ばれます。

IUCNのレッドリストにすっぽんが絶滅危惧種として掲載された一方で、日本の環境省のレッドリストでは、すっぽんは「情報不足」に分類されています。
なぜなら、これまですっぽんが注目されてきたのはもっぱら養殖産業で、野生のすっぽんについてはほとんど調査が行われていないからです。

すっぽんの保全状況

IUCNのレッドリストにおいて、すっぽんの絶滅危惧ランクは、絶滅の恐れが3番目に高い「絶滅危惧II 類(絶滅の危険が増大している種)」に位置づけられています。
II類は、一つ上のランクである絶滅危惧I B(絶滅の危険性が高い)類、または絶滅危惧種で最もランクの高いI A(絶滅の危険性が極めて高い)類へ移行するおそれがあるという定義です。

原因

すっぽんがレッドリストに掲載されるに至ったのは日本、中国、台湾での状況を考慮したものです。
すっぽんの絶滅が危惧される原因は、以下の3つにあると考えられています。

  • 河川や池の周辺をコンクリート化する護岸工事
  • 食用または養殖用としての捕獲
  • 外来種との交雑

レッドリストに掲載されても影響はない

レッドリストに掲載されたすっぽんは天然のものが対象のため、養殖から供給される食用すっぽんに影響はありません。
このことは、養殖業を営む業者や、すっぽんを好んで食べる人にとっては良い知らせです。

また、レッドリストへの掲載が注意喚起にこそなったとしても、法的に拘束力をもつわけではありません。
絶滅危惧種に指定したのは日本の環境省ではなく、IUCNだからです。
そのため、国際取引が規制対象になるくらいで、もし乱獲する人がいたとしても、国内では罰せられることはないのです。
だからといって、池や沼などですっぽんを見かけても、許可なく捕獲してはいけません。

自然に生きるすっぽんを大切に

天然のすっぽんは、主に中国などでは高い値段で取引され、富裕層の買い占めなどが問題視されています。
国内でも、養殖技術が確立しているとはいえ、天然のすっぽんが絶滅してしまって良いということではありません。
絶滅危惧種であるすっぽんの現状に、今一度目を向けてみましょう。